※この記事は「革花作家|販売と心の記録」シリーズの第2話です。
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『絶望の中で見つけた、自分だけのスタートライン』

順風満帆だった日々と、進学の決意
話は少し遡って2017年。
私は、准看護師として外来のある病院に勤めていた。
良き仕事、よき同僚に恵まれ、順風満帆だった。
この病院で働き始めて約3年が経とうとしていたが、何をするにも勉強不足を感じていた。
「もっとこの職場に貢献したい」「もっとできることがあるのではないか」と思い、仕事をしながら正看護師の資格を取得するため、通信制の学校へ資料請求し、進学を決意していた。
突然の閉院──未来が音を立てて崩れる
ある日、病院スタッフ全員が招集された。
少しの不安がよぎる中、院長の口から出たのは「この病院を閉院します」という一言だった。
その瞬間、私の計画はすべて白紙になった。
このままでは、働きながら進学することができない。収入はどうしよう。
これから、ようやく自分の道を決めて一歩踏み出そうとしていた矢先だった。
「働き口ならいくらでもある。これまで面接で落ちたことなんてなかったし、探せばどうにかなる」
そう思っていた──このときまでは。
面接に落ち続け、自信が揺らぐ日々
翌日、ハローワークで4か所の病院に応募した。
どこも快く面接を受け入れてくれ、すぐに次の職場が決まると安心していた。
だが、何かが違った。
面接では前向きに検討すると言われても断られたり、「元スタッフが戻ってきたいというので、そちらを採用します」と連絡が来たり。
これまで順調だったはずの就職活動が、ことごとく崩れていく。
私は、落ち込んだ。真面目に働いてきたはずなのに、どうして?
「こんなこともあるんだな……」と、自分を納得させるしかなかった。
そんな中、1か所だけ採用してくれる病院があった。
噂ではあまりよくないと聞いていたが、働いてみないと分からない。
気持ちを切り替えて就職を決めた。
1日目、みんな優しく接してくれた。
しかし2日目から、私を指導していた人の態度が急変。
3日目には院長から「態度が悪い」「挨拶もできないのか」「子どももいるのにそんなこともできないとは」と30分にわたって叱責を受けた。
4日目、院長の叱責はさらに激しくなり、私は「もう無理だ」と仕事帰りに辞意を伝えた。
すると院長は、私の知らないうちにねじまげられた会話内容を口にし、さらに強い言葉で責めてきた。
帰宅途中、私は号泣した。
前職を辞めてからまだ1か月も経っていないのに、心がすっかり疲弊していた。
「私って、社会不適合者なのかな……」
あれほど頑張ると決めた進学の夢も、もう思い出すことすらできなかった。
働けなくなった私を、救ってくれた兄
翌日、兄から連絡があった。
落ち込んでいる私を察して「何かあった?」と聞いてくれた。
涙が止まらず、仕事もない、資格も取れない、どうすればいいのか分からないと、思いの丈をぶつけた。
兄はこう言った。
「次の仕事が見つかるまで、一緒にレザークラフトやる?」
そのときの私は、現実から逃げたかっただけだった。
でも、兄と何かをすることで、少しでも気がまぎれるなら──そう思って、頷いた。
絶望から始まった、私だけの物語
それが、私がものづくりの道に進む最初の一歩だった。
崖から突き落とされるようにして、すべてが壊れた。
看護師の仕事が好きだったからこそ、なおさら苦しかった。
だけど、その絶望の中にいたからこそ、兄と向き合い、手を動かす時間が生まれた。
最初は、何かしていないと落ち込んでしまうというだけの、情けない理由だったけれど……
兄と共にものづくりに向き合う日々が、少しずつ私を立ち直らせてくれた。
静かに、確かに。
そして──この物語が、始まった。
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