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絶望の中で見つけた、自分だけのスタートライン ──ハンドメイドイベント初出展と「何者でもなかった日」の記録

 ※この記事は「革花作家|販売と心の記録」シリーズの第1話です。  

あのとき私は、まだ「作家」ではなかった。
兄の背中に隠れるようにレザークラフトを始め、右も左も分からないまま、人生で初めてイベント販売に参加した。
何を売りたいのかも、何を届けたいのかも分からなかったけれど──
ただ、自分に何かできることがあると信じたかった。

これは、そんな“何者でもなかった頃”の、私自身の記録です。

レザークラフト初心者として、初めてのイベント出展へ

初めてイベントに参加したのは、2017年の秋頃だった。

兄はすでにレザークラフト歴があり、スマートフォンケースなどの革小物をオーダーメイドで作っていた。私が一緒に活動し始めたのは、2017年の8月ごろ。

兄がある程度の個数の革小物が完成したからと、行けそうな場所で開催されるイベントを探し応募してくれた。

イベントと言えば、大勢の人が来て、ワイワイがやがやしているイメージ。人混みがあまり好きではないし、過去に物販の経験がない私にとって初めての経験で、少しの不安とドキドキが混じっていた。

何も分からないまま迎えた準備の日々

当時の私はまだ革花を作っていたわけではなく、あくまで兄のサブ的な立場だった。

わたしがやっていたことは、兄が革小物を作るためにカットした革の裏面を磨くことや、コバ面を磨くこと。あとは、キーカバーを少し縫う。それくらいしかできなかった。

初めてのイベントだったため、什器(じゅうきというものを人生で知ったのもこの時が初めて!)やショップのレイアウトも考えなければならず、正直、イベントに赴くこともなかった私にとっては初めてのことだらけで、とにかく何をするにもちんぷんかんぷん。

ましてや自分が作ったものを販売するという経験もなかったため、価格をつけようにも思いつくのはバザーで見かけるような数百円という数字…

ショップの名前だけはあったけれど、世界観なんてまったく定まっていなくて、どんな雰囲気にしたいのかさえも全然分からない中での準備段階。

いろいろ考えていると時間だけが過ぎていき、焦る一方で何も決まらなくて、兄とふたりピリピリしていた。

それでも、なんとか兄の自宅で什器をどう使ってレイアウトをどうするのかなど、話し合って決め、準備完了した。

不安と期待が入り混じる、イベント前夜と当日

イベント前夜は、初めての遠足に行くような気分で、少しワクワク、少し不安があった。人見知りしない性格だから、だれとでも話すことはできるけど、だからといって接客なんて経験がない。

お客さまという言葉にさえ口に出すことに違和感を感じるのに、「いらっしゃいませ」なんて言えるのだろうか。そんな想像をしながらも“もし想像以上に売れてしまったらどうしよう…!”なんて淡い期待を抱いていた私だった。

イベント当日、兄の車で会場に向かうと、そこは山奥にある温泉施設。

え??こんなところでイベントするの?温泉に入る人しか来ないのでは…と、会場に足を踏み入れてから、ずっとずっとそんなことを考えてばかり。

他の作家さんは、ずいぶん早く来て準備を終え、初めて会う作家さんたちに挨拶したり「何を販売しているんですか?」と話しかけたり、余裕の表情。

一方の私たちは、初めての準備に追われ、あくせくしていたのだが、きっと周りで見ていた人たちは「騒がしい人たちだな」と感じていただろう。

準備を終えると、タイミングを見計らって私たちの元にベテランとみられる作家さんが声をかけてくれた。挨拶をして、ショップカードをくれて、「こんなことしてます。よろしくお願いします。」と丁寧で余裕のあるごあいさつ。

伺うと、すでに15年ほど作家業をされていて、他県にもよく出展されているとのこと。立ち居振る舞いがベテランの雰囲気を醸し出していて、声をかけられた時点で私は自信を失った…。

自分の居場所が分からなかった販売時間

イベントが始まり、思っていたよりも多くのお客さまが来場してくれた。

私たちのブースは温泉施設の廊下に並ぶ形だったため、温泉に入る前に通る人が商品を見てくれた。カラフルな革小物が多かったこともあり、パッと目を引くのか、足を止めてくれる人も多かった。

兄が作った革小物が少しずつ売れて、兄は満足そうだったけれど、私は楽しくなかった。完成した革小物は“兄が作ったもの”として出していたからだ。

革小物を作る前の段階で、私がようやくできた革の裏面(床面)を磨くこと、コバ磨きに関しては、誰も見ていない。完成した革小物を見て、可愛い!と言って、手にして終わり。

「革小物は自分が作っています」と兄がお客さまに伝えているのを見るたび、何だか自分がやったことが何の意味もなかったように思えて、「何のために頑張ったのだろう」と、イベント中、ずっとやるせない思いに駆られていた。

販売していた革小物は(今考えるとバザーかと思うほどのたたき売り価格だったこともあり)お客さまがためらわずに購入してくれた。

作っていた在庫は半分ほどなくなり、兄は「はじめてにしては良かったんじゃない?」と言っていたが、私はそう思えなかった…。

販売を終えて感じた喪失と決意

イベントの帰り道、私はずっとだんまりを決め込んでいた。

たしかにイベントというものは楽しいけれど、想像していた以上に、喜びがあまりなかった。

イベント前、あれだけ時間をかけて準備しても、頑張りに対してあまりにも少ない売上にがっかりした。

何より、このイベントで、私は“単なるお手伝い要員”だったのが悲しかった。私がレザークラフトをやっている意味って何なのだろう?と、ずっと考え込んでしまうほど落ち込んだ。

帰宅後、兄から、「これからどんどんイベントに出ていけば、売上も上がるはずだから、諦めずに頑張ろう!」と連絡が来た。「そうだね」と返信したけれど、次はあるのか?と思いつつ、初めてのイベント出展は終わったのである。

とても、とても苦い経験だった。

絶望の中で見つけた、自分だけのスタートライン

初めてのイベント出展は、こうして終わったのだが、私の中で悔しさが後々わいてきた。

革小物を本気でやっていない自分、楽しさが分からなかった自分がいたにも関わらず、自分にできることをして価値を見出したいと考えていた。

まだレザークラフターでも、作家でも、クリエイターでもない、何者でもない私は、ここから本気で「ものづくり」の世界へ足を踏み込んだ。

正直なところ、この時の私は仕事をやめたばかりで、売上がないと収入もない状態だった。働きに出ればすぐ収入なんて得られるのに、どれだけ探しても職場が見つからなかったから、この道を究めるしか当時は道がなかった。

有無を言わさず、やるしかなかったのだ。絶望の中で見つけた「やるべきこと」が、私の人生を動かしたのは、この時の出来事がきっかけである。

あなたも、もしどこかで
「がんばりすぎているな…」と感じていたら、
それは、本当のあなたに戻るサインかもしれません。

🌙 心が疲れたときに読む、あなたを知るための手紙

次回|第2話


 

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