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この世界で生きることは、とても息苦しいことだと思っていた矢先に訪れたのは、突然の失職だった。
思いもよらぬタイミングだった。
そこからは、過去に体験したことがないほど、何もうまくいかない日々が続いた。
新たな職場も見つけたけれど、精神的ストレスからすぐに辞めてしまった。
そんな中、落ち込んだ私に兄がレザークラフトを勧めてくれた。
レザークラフトは、焦らずじっくり作品を作ることで、美しい仕上がりになるのだと兄が教えてくれた。
焦らないこと、丁寧にやることを気がけていると、何だか自分と向き合っているようで、作品を作っている時間は無になることができた。
兄とレザークラフトを始めてから1年が経った頃、兄の技術を見て「革で花を作ってみたい」と思いついた。
独学で作っていくことは容易ではなかったけれど、革花を作ることが自分を表現することと繋がっていく感覚があった。
そこは、答えなんてなく、本当に自由だった。
どんなものを作っても、私が表現したいようにできる。
比較することのできない世界だった。
そこにいれば、私は私でいられたし、どれだけやっても楽しくて、何時間でも没頭することができた。
それなのに、数年経ったころから、自分を表現することを横に置いて、世間で言われている成功を手にしようとした。
お金を稼いで成功すれば、みんなが私を認めてくれるんじゃないかと、勘違いしてしまった。
過去に言われ続けてきた「周りとズレた」自分自身も、成功すれば清算されるし、肯定できるかもしれないと思った。
けれど、お金を稼いでみて気づいたことは、「私は、周りが思う成功を求めているんじゃない」ということだった。
私はただ、自分のままでいられたら、それでよかった。
ずっと世間の「枠」から飛び出して、生きづらい世界から解放されたいと願っていたのに、いつの間にか自分から枠に戻ってしまっていた。
世間の成功こそが、自分の正解だと思い込んで。
それに気づいたとき、ずっと握りしめていた革花への執着を手放すことにした。

―私は、どう生きたい?
という問いの答えと向き合って、ようやく答えを見つけることができた。
――私は、私らしく、ありのままで生きたい。
🎧 読むだけでは届ききらない部分を、声でゆっくりお話ししています。
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