誰でも、胸に突き刺さる言葉を受けて傷ついた経験があるのではないだろうか。
私にとって忘れられないのは、兄からの一言だった。
胸に突き刺さった悔しさはやがて、独り立ちを決意させるきっかけになった。

兄の一言で気づいた、頼りすぎていた自分
私は、2017年に職場の都合で職を失った。
これからやりたいことが決まっていた矢先の退職だったために、何をどうしていけばいいのか、1か月先のことも予想できない状況になった。
そんなとき、落ち込んでいた私に兄が「気分転換になるかもしれない」とレザークラフトに誘ってくれ、その流れで作家としての人生を歩み始めた。
右も左も分からない中で、約2年間、兄におんぶに抱っこで「次はどうする?」「何をすればいい?」が口癖だった私に、ある日、兄から思いがけない言葉をぶつけられた。
「お前は他力本願やけん。人にばっかり頼りっきり。そんなんじゃだめさ」
突然の一言に、何が起きたのか分からなくなった。
それまで自分なりにできることをしてきた“つもり”でいたからこそ、そんなふうに言われたことが悔しくて、情けなくて仕方がなかった。
頭の中では「他力本願」という言葉だけがぐるぐる回り続け、理解が追いつかなかった。
しばらくは落ち込んだ。
私には得意なことがなかったし、兄が考えた商品の方が売れる。私が考えたものや作ったものは売れない。だから、兄の言うとおりにしていればいいと思っていたのに…。
結局、一生懸命やったとしても「他力本願だ」と言われてしまうなんて。
私なりに努力してきたことを、兄は何も見ていなかったということ?
それなら、どうすればよかったのだろう――。
冷静になって振り返ってみると、兄の言葉には確かに一理あった。
イベントの予定も価格設定も魅せ方も、売上に関することも、すべてを兄に任せきりで、自分で考えることを避けていたのは事実だった。
兄から見た私は、人任せで「どうにかしてくれるだろう」と思っているように映っていたに違いない。
他力本願だと言わせたのは、私自身の考え方の甘さだったのだ。
2年も兄とともにレザークラフトをしていたのに、私は相変わらず雇用されていた頃と同じ「誰かのせい」にする癖を引きずっていた。
全部が自分事のはずなのに、どこか他人事のように考えていた。
悔しさを力に変えて、独り立ちを決意
実は、兄から「他力本願」と言われる以前に、私は革花一本でやっていくために「いつか独り立ちする」と宣言していた。
もしかすると兄は、その言葉を聞いていたからこそ「今のままでは通用しない」ということを突きつけてくれたのかもしれない。
そう思うと、兄の言葉はずっしりと重かった。
これからは自分で全部を背負っていかなければならないのに、今のままではだめだということか、と。
まるで「このままで終わるのか?」と試されているようで、悔しさがこみ上げた。
だったら証明してやろう。私にだって、やればできる――。
この出来事をきっかけに、私は革花一本で独り立ちをしようと決めたのだった。
言葉の裏側にある真意を受け取る
兄からの言葉は確かに胸に突き刺さったし、とても傷ついた。
それでも今振り返れば、それは心を鬼にして言ってくれた未来へのメッセージだったのだと思う。
ものづくりの世界は、すべてが自己責任。
結果はすべて自分に返ってくる。だからこそ、厳しい言葉も必要だった。
相手の言葉にとげがあったり、深く傷ついたりすることがあっても、
その裏側にある「真意」に気づければ、それは自分を成長させる大切な糧になる。
あのとき兄に言われた一言があったから、私は革花の道を独りで歩もうと決意できた。
今では、あの言葉に心から感謝している。
もし、あなたにも同じように胸に突き刺さる言葉を言われたことがあるなら、 その裏側にある「真意」を探してみてほしい。
きっとそこに、あなたが次へ進むための大切なヒントが隠れているはずだ。
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兄との葛藤とminne掲載で得た自信|革花作家として独り立ちを決めた理由