様々な革花作りが進んできたら、きっと、いろんなサイズの作品を作りたくなると思います。本格的に革花を作るのに、ヌメ革の半裁など大きな革を購入して早速作ってみると――「あれ?大きいものを作ったはいいけど、革が柔らかすぎて扱いにくいな」「小さいものを作りたいのに、革がかたくて切りにくい」など、革の扱いにつまづくことが出てくると思います。
今回は、そんなときのヒントとなるように、革の特性やどんな部位がどんな作品に向いているのかなど、詳しく書いていきます。
- 革を扱い始めて出てきた悩み
- 革の特性を知る|感覚で見る革のちがい
- 革には伸びる部位と、伸びにくい部位がある
- 革のカットのコツ|部位によって使いやすさが変わる
- シワ・傷などがある部位はどうする?|無駄にしない使い方
- おわりに|名前よりも、手で感じた感覚を信じて
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革を扱い始めて出てきた悩み
以前【革屋さんから革を購入する方法】について書きましたが、半裁で革を買うと、とても大きな革が届きます。
はじめの頃は、こんなに大きな革をどうやって使い切ろう?と考え込んでしまうほどだった私。そして、実際その革を使ってみると、うまく成形できなかったり、なぜか以前はしっかりした作りにできたのに今回は革が柔らかすぎて立体感が出にくい…など、さまざまな壁にぶつかることが多くなりました。
革の特性を知る|感覚で見る革のちがい
革って、一見どの部位もきれいでどこを使っても同じように感じます。
でも、革も人の皮膚と同じで、部位によって革の硬さや伸びが違います。人の肌でも頬と瞼では皮膚の伸び方や柔らかさが違いますよね。それと同じです。
革を感覚的にどんな部位ならどんな作品に向いているのかという視点を、私の経験をもとに書きます。
革には伸びる部位と、伸びにくい部位がある
私の手元にある革を用いて、革の部位の名前を紹介します。
これは、半裁で購入した革で、黒い線で囲った部分が革全体の形です。(見にくくてごめんなさい!)
・肩革(ショルダー)|革の中でも伸びにくくしっかりしていて丈夫。
・尻革(ベンズ)|肌がきれいでオールマイティに使える。部分的に伸びることも。
・腹革(ベリー)|薄くて、柔らかく、伸びる。
大きくこの3つの部位に分かれます。
革花を作るときに意識してほしいのは、そのサイズ感。大きめの作品を作りたいのであれば、ある程度しっかりした革を使わないとうまく成形できないし、小さい作品を作りたいのであれば、より柔らかく成形しやすい部位でないとうまくいきません。
これまでの経験から部位ごとに使用しやすいのは以下の通りです。
・ショルダー…大サイズ(ブローチ・一輪花など大きくしっかりした作りのもの)
・ベンズ…中~大サイズ(ブローチなど柔らかさを持たせつつ、かつしっかりしたもの)
・ベリー…小サイズ(ピアス・タックピンなどの小さなパーツ向け)
※必ずしもこれにしか使えないわけではありません。
革のカットのコツ|部位によって使いやすさが変わる
革花づくりに適した革の厚みは「1mm未満」と、これまでの記事でもたびたび紹介してきましたが、このくらいの薄さであれば、ショルダー・ベンズ・ベリーといったどの部位でも比較的カットしやすく、細かい形にも対応できます。
繊細さが必要な作品を作りたい時には柔らかいベリーを使えば、小さなパーツをはさみでカットする難易度がグッと下がります。成形もしやすいです。
逆に、大きな作品を作りたい時にベリーを使ってしまうと、革が柔らかすぎて重さを支えきれずに不安定な成形になり、型崩れの原因にもなります。それでは、せっかくの革花がきれいに咲くことができずかわいそう。
革も適材適所で使用することで、かっちりとした雰囲気になったり、優しくふんわりした雰囲気になったりとイメージしたデザインを再現することができるのです。
あなたが作りたいものの大きさが決まっているとしたら、そのサイズ感やどのくらいの立体感に成形したいのかなど逆算した上で、使用部位を決めるといいですよ。
シワ・傷などがある部位はどうする?|無駄にしない使い方
私は、可能な限り、革を捨てることはしないようにしています。しかし、さまざまな形を作ろうとすると、どうしても端革が出てきてしまう。
そんなとき、私がどうしているかというと、3パターンに分けて考えています。
1・革のシワがひどすぎて作品として使うのが難しい場合
カットしてもシワの癖がとれないほどのときは、染料を混色したときのチェック用として使っています。また、染料の色見本などもこの革で作っています。
2・波打ったような革で、成形しても革にクセが出てしまう場合
漉き加工をすると、波打ったような革になる部位があります。そういうときは、花弁の部分に使うのではなく、花の軸として利用します。
波打っているだけで加工自体は問題なくできます。特に波打つ部位は革の硬さも様々なので、軸の大きさや繊細さに合わせて残っている革を適所で使う感じです。
切る・巻く・すぼめるなど、軸としての成形にも使えるので、活用してみてください。
3・きれいだけど小さくなった革の場合
「作品として使用するには少し小さい」革って、どうしても出てきます。
そんなときは、小さなパーツに使うのがおすすめです。端革なのであれこれ集めるのは大変ですが、革としてまだきれいであれば無駄にしません。
私は、花びらの形に切るときの練習として使うこともありますし、花弁全体を作る前に一部試作として使うこともあります。特に、立体感を出すときのコツをつかむには、こうした端革がとても役立ちます。
成形もモチーフによって変わるので、どんな形になるか試してみないと分からないこともありますよね。サイズが小さいからこそ「こうした方がいいかも」「やっぱり大きくないと支えられないかも」など、新たな発見につながることも多いです。ぜひ、端革もうまく活用してみてください。
おわりに|名前よりも、手で感じた感覚を信じて
革の部位名や難しい用語を覚えるよりも、「この革、ちょっと柔らかいかも」「このあたり、しっかりしてるな」と感じる自分の手の感覚が、いちばん信頼できます。
私も、今でも革の名前で判断するのではなく、実際に手に取って、感触で使い分けています。だから、あなたもきっと大丈夫。
使うたびに気づきがあって、少しずつ「自分だけの基準」ができていくはずです。
無理に完璧を目指さなくてもいい。革は、一枚の中にいろんな表情があるからこそ、面白いんです。
それぞれの革が咲かせてくれる花を、あなたの感覚で育ててあげてくださいね。
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私の経験をもとに、革花向けの革選びや革の厚さについて書いています。初心者さんにも優しい画像多め&詳しい説明つきの記事です。
大きなものを制作したい、販売のために革を購入したいけれど、革の専門店や業者さんから直接購入したことがなくて不安な方のために、詳しい革の選び方と購入方法を解説しています。注文するときに気を付けるポイントや、必ず伝えるポイントも。
記事の最後には、革を購入するときのチェック表もあるので、ご活用くださいね(^^♪
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