紫陽花2025・Vol.3|ブローチ制作のこだわりと革100%への挑戦

今回の記事は、【紫陽花2025・Vol.2】の続きです。
前回の記事はこちら


紫陽花ブローチの制作過程。染めた花びらが並べられ、中央にはブローチ台座と装飾用のビーズが配置されている。淡い紫色の花びらが美しく広がり、繊細な雰囲気を醸し出している

ピアスやイヤリングが完成したあと、ブローチを作り始めた。

今回の紫陽花は、これまでとは少し違って、ひとつひとつの花のサイズが大きめ。
その分、グラデーションがよく映えて、眺めるのも楽しい。
どれをとっても同じ色がひとつもなくて、つい、じっくり眺めてしまう。
そんなブローチにしたいなと思っていた。

ひとつは、過去にいくつも作ってきた丸い形のブローチ。
そして、もうひとつは…

私が以前から作りたいと思っていた作品。
金具の形状に左右されない自由なデザインと、革らしからぬ優しい雰囲気に、花弁のゆるやかな動きのあるもの。
いつもなら、ノートに書いたデザインから考えるけれど、今回は考えるより先に手が動いた。

作りたいと思っていたのは、ブローチピン以外の部分が革100%でできたもの。
紫陽花の花弁をふんだんに使った、華やかな形。ブローチとしての存在感はもちろん、飾って楽しむことができるサイズ感。
そして、ずっと眺めていたくなるようなグラデーションカラー。
そのすべてを叶えるために、ただ黙々と革と向き合った。

革100%で作るといっても、これまでの私にとっては、口で言うほど簡単じゃなかった。

 

紫陽花ブローチの制作過程。細長く染められた茎がトレイに整えられ、手前には組み立て途中の紫陽花パーツが並んでいる。淡い紫とピンクが混ざり合い、繊細な色合いが特徴。

 

単に私の技術力が足りていなかったことが一番の理由だけれど、それ以上にハードルを上げていたのは、“革花アクセサリー”という実物より小さなサイズのものづくりゆえの難しさもあった。

簡単に作れる道具なんて存在しないし、かといって、道具さえあれば完成するものでもない。
想像している形を“作品”として表現するとしたら、それだけでは成り立たず、どうやって作るのかという“方法論”が必要だった。これまでは。

そうして、イメージしたものをどう表現するかでとてつもなく時間がかかっていた。
でも、今回に限っては、どうやって作ろう、とか、できないかもしれない、なんて考えなかった。
とにかく思いのままを形にしたら、想像していたよりずっと“表現したい形”に仕上がった。

ブローチが完成した時の興奮とワクワク感が、私の中に大きな波のように押し寄せた。

 

紫陽花ブローチの制作途中。花弁が集まり、ブローチの形が見え始めている。手に持ったことでサイズ感が分かり、繊細な花びらが美しく輝いている。


そのあまりにも優しい雰囲気に、革であることを忘れてしまう。
手のひらにのせると、一気に初夏が来たようで、心が弾む。

夏は、もう、すぐそこに。

 

次回、紫陽花2025・Vol.4では、完成した紫陽花作品を紹介します!
どうぞお楽しみに。

 

💬 ご感想・ご質問お待ちしております! 📩 コメントはこちら コメントを書く

プライバシーポリシー | お問い合わせ