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話したいのに話せない。そんなとき、心の中で起きていること。|自己対話

紅葉した銀杏の葉っぱ。

先日、新しく作った「ただ、生きるということ」というカテゴリで、ここ数年の出来事を振り返り、心の変化を書きました。

📖 「ただ、生きるということ」シリーズ一覧

 

私は、子どもの頃から、物事を深く考える癖があり、「なんでそんなことまで考えるの?」と周りに驚かれることがよくありました。
それが普通だと思っていたので、逆に「え、考えないの?」と驚いたくらいです。

そのうち、「私ってちょっと変なのかな?」と、自分にレッテルを貼ってしまったこともありました(若かった頃の話です)。
でも今は、ただそういう性質だっただけなんだと思っています。

育った環境の中で、「自分でどうにかしなきゃ」と思い続けた結果、自然とそうなったのかもしれません。
でも、それが悪いことばかりだったとは思っていません。

 

私の深く考える癖というのは、実は、頭の中で起きている“自己対話”です。

何か出来事があったときだけでなく、ぼんやりしているときや、何かをしているときに、ふと過去の場面が浮かんでくることがあります。

思い出すのは、たいてい苦しかった出来事や、まだ消化しきれていないこと。
無意識に思い出してしまうので、胸が締めつけられるようなこともありました。

自分が望んだように動けなかったこと。
深く傷ついたこと。
あのとき、言いたかった言葉。

そういうシーンが、勝手に頭の中で再生されて、もう一度その瞬間をやり直しているような感覚でした。

 

何度も繰り返し思い出してしまって、最初はそのときの気持ちに引っ張られて、泣いたり、胸が苦しくなることも多かったです。
けれど、年齢とともに、その痛みを“学び”として受け取れるようになっていきました。

「あのとき、こう言いたかったんだな」
「素直に、こう言えたらよかったんだよね」

そうやって、自分自身に言葉を返していくと、当時の痛みが少しずつやわらぎ、思い返す頻度も減っていきます。

自分の中で消化できた出来事は、やがて学びとなり、心の成長につながっていきました。

 

子どものころは、特に傷つきやすい性格でした。
だから、自己対話を繰り返すことで、少しずつ痛みを自分で消化していたのだと思います。
けれどその反面、人に本当の自分を見せることができなくなっていきました。

誰かといるときは、強い自分でいられたし、何か言われても笑って流せていました。
でも、ひとりになると、思い出してしまって、泣いていました。

自分で鎧を着て、傷つかないように、強く生きなきゃとがんばっていたんだと思います。

 

そうして大人になると、それが当たり前になってしまって、気づけば本当の自分がどれなのか分からなくなっていました。

表向きの私しか見ていない人からは、
「一人でも生きていけそう」「鋼のメンタル」「落ち込まなさそう」
なんて言われていましたが、実際はその逆でした。

何を言われてもこわくて、いつまでも引きずってしまうし、心はずっと傷ついたまま。

でも、「大人なんだから笑って流さなきゃ」と、どこかで思い込んで、笑顔で我慢するようになっていきました。

 

けれど、あまりにつらくて、誰かに話そうとすると、涙があふれて言葉が出なくなる。

我慢を続けていると、思っていることがうまく言葉にならなくなるんですよね。
本当は心の底では話したいのに、飲み込み続けてきたせいで、言葉が出てこなくなる。

話したいのに、話せない。

「話していいよ」と言われても、どこから、何を話せばいいのか分からない。
その瞬間、心に“バグ”が起きます。

もう限界を超えていて、休んでも、気分転換をしても、どうにもならない状態になります。

 

心配した周りの人が「話だけなら聞くよ」と言ってくれることはありました。
話せるものなら話したい。でも、話せないからつらい。
その繰り返しで、どうしたらいいのか分からないまま、負のループに入ってしまいました。

ここまでくると、心が元の状態に戻るまでに、ものすごく時間がかかります。

よく「早めに心療内科に行ったほうがいい」と言われますが、行ける人はきっとまだ余力がある人。
私がその状態になったときは、もう誰にも話せなくて、「話すこと」自体がこわいものに変わってしまっていました。

解決策が見つからないから休むしかないけれど、休んでいる間も、頭は悪い方へ考えてしまう。
抜け出したくても抜け出せない状態でした。

 

そんなとき、「じゃあ誰なら話せる?」と考えると、答えは “私を全く知らない人” でした。

身近な人には話せない。
かといって病院に行けば、知り合いがいるかもしれない。噂になるかもしれない。
そんなことまで考えてしまうほど、「自分のことを話す」という行為がこわかったんです。

この怖さは、経験した人なら分かると思います。
大きさは違っても、きっと誰もが一度は通る道なんじゃないかと感じています。

 

こんな経験があったから、私は子どものころから、誰かの聞き役だったのかなと、今になって思います。

本当につらいとき、ただ、そばで聞いてくれる人が一人いれば、それだけでいい。
私は、それを子どものころから、感覚的に知っていたんだと思います。

だから、見ず知らずの人や、そこまで親しくない人でも、私には心の内を話してくれることが多いのだと思います。

私ができるのは、そんなつらさを抱えた人や、誰にも言えない苦しさを持っている人に対して、ただ、静かにそばで話を聞くことです。

そして、その先に必要な問いを投げかけて、自分の中にある答えをじっくり考えながら内側と向き合ってもらうことです。

答えは、あなたの中にしかないからこそ、時間をかけて深く潜りこんで、本当のあなたを一緒に見つけに行くのです。

 

だからこそ、一度、自分の中にあるものを外に出して、
「今、どう感じているのか」「本当はどうしたいのか」
自分の声で確かめて、受け止めていくことが必要です。

答えは、いつも自分の中にあるから。

私は、そのためのそばにいる人でいられたらいいなと思っています。

 

本当の自分に戻るには、とても時間がかかります。
私も何年もこじらせてしまったので、よくわかります。

「人に話すのは抵抗がある」
「どうやって心を癒せばいいのか分からない」
そんなふうに感じる人もいると思います。

そういう方に向けて、私がどんなふうに自分と向き合い、少しずつ本来の自分へ戻っていったのかを、手紙という形でまとめました。

自己対話の中で出てきた“問い”をたどりながら、過去と現在をやさしく行き来する流れになっています。

今つらいと感じていることが、どんな出来事と結びついているのか。
本当は何を感じているのか。

一人では向き合うのが難しいときでも、ゆっくり進められる内容です。

必要なときに、受け取ってもらえたら嬉しいです。

🎧 このお話は、ラジオでもお話しています。

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