ものづくりを始めたばかりの頃は、作りたいものが定まらず、あれこれ手を出してしまうことがある。それでも、その時期は決して無駄ではない。
今回は、私自身の経験を交えながら「作風の軸」が見えてくるまでの流れと、その先に広がる世界観の作り方について話す。
試行錯誤の時期に作風の軸を育てる方法
ハンドメイド作家として作品を作り始めたばかりのころは、思いのままに作ってしまうものだ。
それは「ものづくりの楽しさ」を存分に味わっている証拠でもある。
私も最初から革で花を作ろうと決めていたわけではない。作り続けるうちに「革で花を作ってみたい」という思いが生まれただけで、初期はモチーフや色も統一感がなかった。羽根モチーフや編み込み、刻印など、さまざまな形を試していた。
初期作品。どれも革で作っているが、モチーフや色などがバラバラ。私の試行錯誤の証。
完成した作品には一貫性はなかったが、その中で「もっとこうしてみよう」と工夫したり、客観的に見て違和感を覚えたり、「この作風が好きだ」と感じたり──そうした積み重ねが、自分の中の「好き」を少しずつ鮮明にしていった。
商品の軸(作風)が見え始める小さなサイン
作品が完成したら、それを並べてじっくり観察してみよう。多く作っているモチーフや色に、必ず共通点があるはずだ。
ものづくりは、自分の中の「これが好き」を形にしていく作業だから、楽しいと感じるものには一貫した特徴が現れる。モチーフや色だけでなく、サイズや素材にもその傾向は出る。
一方で、作っていて気分が乗らないものは、完成までに時間がかかり、手も止まりがちになる。そう感じたら、それはあなたが本当に作りたいものではないのかもしれない。
逆に、何時間でも没頭できるほど楽しいものこそ、あなたが求めている作品だ。
作風の軸を世界観につなげるステップ
【革×花】という軸で作ると世界観となって現れ始めた私の作品たち。
作り続けるうちに「これが作りたい!」という軸が決まると、それがやがて世界観の土台になる。
面白い・楽しい・好きだと思える作品を中心に、色やサイズを変えて数多く作ってみよう。そうするうちに統一感が生まれ、全体を眺めたときに“あなただけの世界”が形になる。
この過程で、お客さまの反応も大きなヒントになる。「この形が好き」「この色がいい」といった声には、作風を深める種が隠れている。最初のうちは第三者の感想も積極的に取り入れてみるといい。
そこにたどり着くまでには時間がかかるかもしれないが、諦めずに続けてほしい。
あなたの手から生まれる作品が、“これだ”と思える瞬間を、きっと迎えられるはずだ。
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第10話|迷走から革花へ──目標が生まれた瞬間
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この記事は、「ものづくりで生きるということ」というカテゴリの中の一編です。
これまでの経験から生まれた学びや気づき、そして悩んだときにどう向き合うか──
考え方や心の在り方について綴っています。
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