※この記事は「革花作家|販売と心の記録」シリーズの第9話です。
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私にしか作れないものを探して──革花への情熱が芽生えた日

さまざまなイベントに出展するようになってから、初めて百貨店での出店が決まった。
しかも、5日間連続での出展は初めてのこと。
それまでの場所と違い、中心街にあるため出展料が高く、悩んだものの、新たなお客さまとの出会いを求めて、出展することを決めた。
ここでは、それまで出会ったことのなかった出展者さんもいて、お客さまが少ない時間帯には、さまざまな方と情報交換できた。
ほとんどの人は、イベント出展で収入を得ていたようだが、中には元々公務員をされていた人もいた。その人は顔が広いことから新聞に載ったりテレビでの取材を受けたりして、早々に認知度が上がり収入に結びついたと言っていた。
当時の私は、その場では誰とでも話せるものの、深く誰かと繋がることをしたがらなかったこともあり、その方法が自分には合わないことを早々に悟った。
―「人が仕事を連れて来る」
そう言われても、私には人脈がない。友人もいない。
まだ革花も完成していなかった私には、別世界の話のように思えた。
ましてや、私が作ったものは、全然売れていなかったし、作ったものはどんどん在庫になっていくばかり。話を聞いても、まるで夢物語のような気さえしていた。
でも、そんなふうに感じていた私にも、少しだけものづくりの見方が変わるような出来事が、百貨店での出展中に訪れた。
プレゼント選びでリアルに感じたペルソナ像
百貨店での出展は5日間あったため、本当に多くのお客さまとの出会いがあった。
中でも印象的だったのは、プレゼントとして選ばれる方が多かったことだ。
私たちのブースで足を止めてくださった方にお話を伺うと、大切な方へのプレゼントにしたいとのこと。
私は、できるだけ、細かくお相手がどんな方なのかを聞いた。
年齢層やお相手の方のイメージカラー、好きな色、普段着のタイプなど、聞いていくうちに、私の中でどんな雰囲気なのかがイメージ出来た。
私自身は全く知らない方へのプレゼント選びなのだが、実際一緒になって選んでいくと、まるで自分自身がその人へ贈るものを探しているような気持ちになった。
お客さまと話しながら、革小物やアクセサリーを見ていき、イメージが付いたら「このお色はいかがですか?」と聞いてみる。
すると、「あ!それ、イメージにぴったり!!」と、声が弾むのが分かり、そこからまた、似た色から実用性の高いものを選んでいくと、どんどん求めていたものに近づいていくことができた。
数回のやり取りから、最終的に選んだものを見て「これで!!」と、笑顔で言ってくれたときの表情は、今でもずっと忘れない。私自身も、とても嬉しかったし、まるでたくさんのピースの中からピタッとはまるものを探し当てたときのような気持ちだった。
「選ばれる理由」に気づいた日
それまで、作ることに熱心になっていた私は、そうしたお客さまのリアルな反応をしっかり見ていなかったことを反省した。
「売れるか、売れないか」という、自分の中の判断基準だけで、お客さまに喜んでもらえていないと思い込んでいた。そして、最終的に「どうして選ばれたのか」という一番大事な部分に目を向けずにものづくりをしていたことに気づいた。
どんな思いで作って、どんな部分を工夫して、どう使ってほしいのか。その一番根底にあるコアな部分を伝えずして、見た目だけで判断できるわけがないのだ。
私の作品は、目を向けてもらえていなかったんじゃない。
その作品の良さを伝えきれていなかっただけだった。
作品を見てもらい、こだわりポイントを伝えて、それを使った時のことをイメージしてもらう。
お客さまは、それを渡したときに相手が喜んでくれる顔や、使っているところがイメージできるから、選ぶのだ。
ものづくりの概念がガラッと変わった経験
私の中にあった、ものづくりの概念がガラッと変わる出来事だった。
この時は、まだものづくりを必死にしていたし、販売のことも何もわかっていなかったけれど、これを機に、ほんの少しだけものづくりの真髄に触れた気がした。
当時は気づいていなかったけれど、この出来事が、その後のインターネット販売においての「ペルソナ設定」の学びに大きく影響したことは言うまでもない。
▶ 第10話
この記事は、「革花作家|販売と心の記録」というカテゴリの中の一編です。
2017年に革花を始めた当初からの、販売の葛藤や気づき、そして自分自身と向き合ってきた過程を時系列で記録しています。
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