
はじめに|ニッチな世界を選ぶのが怖かったあなたへ
「誰とも被らない、私だけのものを作りたい」。そんな気持ちから、革で花を作ることを思いついた。
けれど、革花というジャンルは誰にも知られておらず、「やってみたい」と思う一方で、本当にこんな道を選んでいいのか、ずっと不安だった。
でも、最初から売れるはずもなく、長い間、売れないことに悩んでいた時期があった。イベントなら、実際に手にとってもらえて、想いやこだわりも直接伝えられるけれど、インターネットの世界ではそうはいかなかった。
どれだけ熱い気持ちで取り組んでいても、「革花」という存在そのものが知られていなかった。それが、ニッチな世界を選んだときの、最初の大きな壁だった。
ニッチなハンドメイドジャンルを選んだ理由
きっかけは、兄が教えてくれたレザークラフトだった。けれど、兄のように武骨で機能的な革小物を作るのが、私にはどうしても合わなかった。
何度も挑戦しても上手くできず、心が動かなかった。作っても楽しくなかった。兄は器用に仕上げていくのに、私は言われた通りに作るのがやっとで、だんだんと気持ちが離れていった。
子どもの頃から特別得意なことがなかった私は、「誰にも負けない何か」が欲しくて、何かに出会いたかったのかもしれなかった。
そんなとき、兄が使っていた技法「革絞り」を見て、革が自由に形を変える素材だと知り、「これで花を作ったらどうなるだろう?」と思った。
ふわりとした花びら、曲線、グラデーション……それまでのレザークラフトとは真逆の世界が浮かんだ。
「これをやってみたい」と強く感じた瞬間だった。
初めからニッチな世界を狙っていたわけではなく、ただ「誰もやっていないことを、自分の手で生み出したい」という気持ちだけだった。
そうして、“革花”(かわはな)という言葉も、ジャンルも、作り方でさえも独学で作り上げていった。
革花が売れない時期をどう乗り越えたか|意味と希望を見つけるまで
私はイベント販売を経て、コロナをきっかけにネット販売へと切り替えた。
でも、ネット上では「革花」という言葉がまったく浸透しておらず、説明なしでは誰にも伝わらないほどだった。
革花という言葉を、私は自然に使い始めたけれど、最初は誰も知らなかったし、検索しても何も出てこなかった。それだけに、認知されるまでには本当に時間がかかった。途中、何度も「これをやる意味って何だろう?」と考えたり、「やめたほうがいいかもしれない」と弱気になることもしばしばあった。
それでも今、革花作家として活動を始めて9年目を迎え、私は心から「続けてきてよかった」と思っている。
革花というジャンルそのものが浸透し、名前で検索してくれる人も増え、私の存在を知ってもらえるようになった。時間はかかったけれど、だからこそ手応えがあるのだった。
ニッチなハンドメイドが育てたお客様との絆
革花アクセサリーを販売していく中で、本当にたくさんのお客様と出会った。
革婚式や結婚記念日、クリスマスの贈り物、結婚式当日のアクセサリーに選んでくださる方もいて、「初めて見た」と感動してくれる声も多く届いた。
他では手に入らないものを、私を頼って選んでくださる。その喜びは、何よりのご褒美だった。
ときには不安や迷いで心が揺れたこともあった。でも、ブレながらも作り続けてきたからこそ、「kaoさんの作品がほしい」と言ってくださる方との繋がりが生まれたのだと思っている。
作品とともに、深い絆も育ててこられた──それが、ニッチな世界を選んだからこそ得られた大切な財産だった。
ニッチなハンドメイドで悩む人へのメッセージ
ニッチなジャンルで活動するというのは、時間がかかることだった。
「知られていない」ことは、評価されないこととほぼ同じ。始めたばかりの頃は、誰にも見向きされず、孤独を感じたり、「これって意味があるの?」と自問自答する日もあった。
でも私は、それでも歩みを止めないでほしいと思っている。
ニッチな世界とは、言い換えれば“まだ道がない場所”だった。その道を、自分の足で切り拓く。誰にも真似できないことを、自分が初めてやっていく。その経験は、かけがえのないものになる。
「売れる」ことだけがハンドメイドの価値ではない。
自分が楽しくて、表現したくて、誰かに伝えたくて作っている。だからこそ、結果として誰かの心に届き、必要とされて、売れていく──その順番は、ずっと変わらない。
ものごとは、私たちが思っている以上に、もっとシンプルなのだ。
minneラボで和田まおさんに相談した日
実は、minneで販売を始めて約2年経った頃、なかなか売れずに悩んでいたとき、YouTubeチャンネル「minneLAB」で、和田まおさんに質問を取り上げていただいたことがあった。
「革花をこのまま続けていていいのか」と迷っていた私にとって、この動画でいただいた言葉は、今でも大きな支えになっている。
もし、同じようにニッチなジャンルで迷っている方がいたら、ぜひ見てみてほしい。
👉 YouTube|minneLAB
【成果がでない…ギャラリー作りに行き詰ったときの見直しポイント】
まとめ|ニッチな世界でやりたいことを育てるには
売れない時期や、思うように結果が出ない時期は、誰にでもある。
でも、自分が「これをやりたい」と思っている限り、その道に意味がないことは絶対にない。
ニッチな世界には、独自性がある。自分の世界を表現する力がある。そして、それを待っている人が、必ずどこかにいる。
時間がかかっても、信じる道を育てていくこと。 それこそが、あなたにしかできないものづくりの原点になるのだ。