こんにちは♪革花作家のkaoです。
先日から公開スタートした、新作“菜の花”の制作日記。
これまでお見せしたことのなかった制作の裏側をお届けしています。
第1回目を見逃した方は、下記の投稿からご覧いただけたら嬉しいです。
前回は、作品を制作する前のインスピレーションについてお話しました。
今回は、作品を作ろうと思い立ってから、型紙制作~革を切るところまでのお話です。
※実際の制作ではまずデザインを考えるところからなんですが、完成形を先にお見せすることができないため、デザインは一番最後に投稿しますね!
革花制作|型紙制作をアナログからデジタル化へ
「革で花を作りたい!」と思い立った2017年から2022年まで、型紙はすべて手書きで花を厚紙に写して作るという、超アナログな方法を続けていました。作家としてまだ何も確立されていなかった初期の頃、まさか今のようにデジタル化ができるなんて想像もしていませんでした。
- 機械で革をカットできるらしいよ!
- でも、パソコンやアプリを使いこなさないと無理なんだって…。
そんな話を聞くたびに、デジタル化はとても難しそうなイメージがありました。
転機が訪れたのは、minneとのコラボ企画。スキャンカットという機械を使って作品を作るお仕事をいただいたときです。
これが「革を機械でカットする」という、ずっと気になっていたチャンスでした。
とはいえ、パソコンで型紙を作り、データを送信してカットする…頭の中はすぐにパニック状態!デジタルが本当に苦手だった私は、話を聞いても「何それ?」と混乱するばかりでした。
期限に間に合わせるため、そのときは紙に型紙を描き、機械に読み込ませてカットするという半分アナログ・半分デジタルな方法で何とか乗り切りました。
コラボ企画を通じて何度も革をカットしてみた結果、こう思いました。
「これがあれば、私が表現したい作品にもっともっと近づけるかも…!」
手書きの型紙を革に写し、パーツを一つずつハサミで切るという工程を数年続けていた当時、これこそが作品への愛情だと思っていました。しかし、少しずつ作品を手に取ってくださる方が増えたことで、新たな課題に直面しました。
たくさんの人に届けるためには?
もっと高いクオリティの作品を作るには?
この課題を乗り越えるため、思い切って型紙制作からカットまでの工程をデジタル化することを決めました。デジタル化してしまうと、ハンドメイドと呼べなくなるのではないか。手抜きだと思われるかもしれない。そんな不安がずっとありました。それでも、こんな強い思いがありました。
- 絶対に趣味の延長だなんて言わせない。本気でこれを仕事にする!
- 私にしか作れない作品を作るんだ!
こうして、新たなチャレンジが始まりました。
(あっ、制作工程だけ話すつもりが、昔話で長くなってしまいました…!すみません(;^_^A)
スキャンカットを導入した直後につまずいたのは、やはり型紙をデジタルで作るという工程でした。イラストレーターのようなアプリを使うのですが、まったくの初心者だった私は、ものすっっっっごく苦戦しました。
毎日模索を続け、最初に作った作品は身近な人から「クオリティが下がったね」と言われてしまう始末。悔しくて猛勉強を始めた結果、次の作品からは少しずつクオリティが向上していきました。
型紙は、花びら一片から作られる
ようやくここから制作の裏側です。笑
※今回は、菜の花に見立てたシンプルな型紙を作っています。
① 型紙の最初は、丸い円形からスタート。
② まず花びら一枚を作ります。この一枚が美しく作れないと、型紙がゆがんでしまうため何度も微調整を繰り返します。
③ 作った花びらを花の形に並べます。
④ 並べた花をひとつの図形としてまとめ、型紙データが完成です。
型紙のデータを機械へ送信してカット!
作った型紙データを機械に送信すると、革をカットしてくれます。
最小カットサイズは2㎜という細かさ。今となっては、この機械は私の相棒です。
ちなみに、この相棒には【カットちゃん】という名前を付けています。カットするたびに「今回もよろしくね!」「きれいにカットしてくれてありがとう♪」と声をかけているほど大切な存在です。
たくさん並んだ花のパーツ。革をぺりぺり…とはがしていくと、花のパーツだけが残ります。シールみたいで面白い。笑
シートからカットした革をはがして、ようやく花のパーツの出来上がりです!
パーツをはがすときは、ゆっくりじっくり時間をかけています。荒々しくはがすと革が傷ついて、その後の工程となる“染め“が美しく仕上がりません。どこかで神さまが見ているのか?と怖くなるほど、少しでも手抜きをしたり適当にやってしまうと必ず作品のどこかにアラが出てくるので、ここも絶対手抜きしません!笑 経験者は語る…(^▽^;)
どの工程も、ひとつずつ丁寧にやらなければ美しい作品にはなりません。これは作家を始めてから、何度も痛感してきたことです。
「ちゃんとやったはずなのに、どうして美しく仕上がらないんだろう?」
「どうして染料がなじまないんだろう?」
自分にこうした疑問を投げかけながら、最終的にたどり着いた答えはシンプルでした。それは、「適当だったから」ということ。気づいたときには猛省したものです。
どんなに「ひとつずつ丁寧に作っています」「時間をかけて作っています」と説明しても、作品を一目見ればそれが本当かどうかは分かってしまいます。
だからこそ、胸を張って「私が作りました!」と自信を持って言えるように、その日その瞬間を一生懸命にやりきる。
やはり、神は細部に宿ると、私は信じています。
最後に|私が伝えたい革花制作の本当の姿
制作日記②はいかがでしたか?
工程だけお話するつもりが、こんなに長くなってしまって本当にごめんなさい。作品を作ることになると、どうしても熱くなりがちで、「あれもこれも伝えたい!」と思ってしまう私です。
アナログからデジタル化へ進むとき、誰にも責められたわけじゃないのに、なぜかすごく悪いことをしているようで、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
でも、時代の流れに合わせて自分自身も柔軟に前進し、成長していこうと思えたのも本音です。
今では、私の相棒となったカットちゃんも、型紙を作るためのアプリも、なくてはならない存在になっています。
何より、デジタル化したからこそ進化できた部分があると実感しています。
- これまでお見せできなかったようなクオリティの作品を世に出せたこと。
- 「革でこんなこともできるの?」とワクワクを届けられること。
- そして、多くの方へ作品を届けられるようになったこと。
これらは、デジタル化を選んだからこそ得られた大切な成果です。
もう何年もお客さまに嘘をついているようで申し訳なくて言えなかったけれど、今日ようやくお伝えすることができました。ずっと言えなくてごめんなさい。
でも、みなさんに届けたい思いは、革花を作り始めたころより、ずっとずっと大きくなっていて、それを届け続けることが私の使命だと今では思っています。
単に、革で花を作っているだけだけど、そこに人生をかけた情熱があるということを知ってほしくて、こんなにたくさんの文章でお伝えしました。型紙を作るところから切るところまでの工程を伝えるだけのつもりでしたが、最終的には言えなかったことを伝えるための投稿みたいになってしまいました。
こんな不器用な私ですが、これからもOne-Off Kaoの革花作家kaoとして、多くの方に作品への情熱や、わくわくする気持ちや思いを伝えていきますので、見守っていただけると嬉しいです(*^▽^*)
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デザイン・型紙制作・染色・成形・仕上げまで、革花作家の試行錯誤をぜひご覧ください。
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