
今日は、ちょっといつもと違うお話をしようと思います。
これまで私は、あまり自分のことを語ってきませんでした。
けれど、どうして革花を作るようになったのか、
どうして今、こうして発信をしているのか——
そんな「これまで」と「これから」のことを、自分の言葉で少しずつ、話してみたいと思います。よかったら、お付き合いください。
🎧 このテーマについて、ラジオでもお話ししています。
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- 革花との出会い|私が作りはじめた理由
- 楽しかったはずが、苦しさに変わった時期
- 販売を続けながら感じていた、言葉にしづらい違和感
- 発信という選択|伝えることが「救い」に
- これからの発信について|技術だけでは伝えきれないこと
革花との出会い|私が作りはじめた理由
話は、2017年にさかのぼります。
当時、私は仕事を辞めて、少し途方に暮れていました。
そんなとき、兄に誘われてレザークラフトを始めることになったんです。
最初は、兄が作っていた革小物の制作を手伝うところから。
でも、ある日、兄が「革絞り」という技法を見せてくれて——
その瞬間、私の中で何かがパッと弾けました。
「革って、こんなにも自由に形が変えられる素材なんだ」
「私、この素材で“花”を作ってみたい!」
そんな衝動にも近い気持ちが湧き上がってきて、そこから私の“革花人生”が始まりました。
当時は「革花」なんて言葉すら見つからなくて、検索しても作り方は出てこないし、
たまにあったとしても、自分が表現したい花とはまったく違う。
「ないなら、作ればいいじゃん」
そんな勢いで、ゼロから独学で革花を作りはじめました。
毎日が試行錯誤。誰にも教わることができなかったからこそ、一つ一つの工程を、自分の手と目で確かめながら積み上げていきました。
販売できるレベルにたどりつくまでにも、時間はかかりました。
でも、自分でゼロから築いてきたという確かな自信と、伝えたい世界観があったからこそ、ここまで続けてこられたのだと思います。
最初は兄と一緒にイベントに出展していましたが、もっと多くの人に革花を届けたくなって、2018年の終わりごろから、インターネットでの販売をはじめました。
それまで販売とはまったく無縁だったので、どうやって届けたらいいのかも、何が正解かもわからなくて。
それでも少しずつ革花の魅力を知ってもらえるようになって、「嬉しいな」「もっと喜んでもらいたいな」そうやって毎日考えるのが、いつの間にか楽しくなっていきました。
楽しかったはずが、苦しさに変わった時期
数年続けていくうちに、いつしか「どうやって売るか」が中心になっていきました。それは戦略とも呼べるもので、確かに必要なことでもありました。
けれど、いつからか私の中に、違和感が生まれはじめたんです。
革花を作るのが楽しくて、「やってみたい!」と、あれほど情熱を持って始めたはずなのに、どれだけ作っても心が満たされない感覚。
「好きだったはずのものづくり」が、いつしかプレッシャーになって、「私、なんでこれ作ってるんだろう?」と思うことが増えていきました。
あるとき、作らなきゃいけないとわかっているのに、どうしても手が動かなくなってしまって。机に向かえない。革を見ることもできない。
何も考えられない。——
そんな状態が、1か月以上続いたこともありました。
しかも、それは年に1~2回、必ず訪れる。
スランプとは少し違う、もっと根の深い感覚。
それでも、私はずっとその理由がわからないまま、ただ「作らなきゃ」と思って、革花の販売を続けてきました。
販売を続けながら感じていた、言葉にしづらい違和感
転機が訪れたのは、2025年の1月。
思いがけないほど多くの注文をいただいたときのこと。
求めてもらえることは、本当にありがたくて嬉しかった。
でも、心のどこかで「どうしよう…」という感情が離れなかったんです。
その“どうしよう”が何を意味しているのか、当時の私はまだ気づいていませんでした。
その後も販売は続けていましたが、心の奥にずっとあったのは、「また同じ状況になったとき、自分は本当に向き合えるのか?」という不安。
そしてふと未来を思い描いたときに、歳を重ねて、手が動かなくなったら? 目が見えなくなったら?
——そう考えたときに真っ先に浮かんだのは、
「私の革花がここで終わってしまうかもしれない」という、ぽっかり穴があくような寂しさでした。
初めて「革で花を作りたい」と強く思ってからの9年間。
革花の作り方だけを探求し続けてきた日々には、本当にいろんな気持ちや経験が詰まっていました。
その時間を、誰にも知られないまま終わらせてしまうのは、あまりにももったいないと思ったんです。
だから私は、これまで誰にも見せてこなかった革花の作り方を、ブログに書いて残すことにしました。
誰かのため、というよりも——
私自身が、「伝えてみたい」と心から思ったから。
画像と言葉で、当時の革花の作り方を丁寧に記していく中で、自然と、自分の気持ちや考え方も言葉にしたくなっていきました。
気づけばそれが、とても心地よくて、「私は、この世界をちゃんと伝えたい」と思うようになったんです。
発信という選択|伝えることが「救い」に
YouTubeでの発信を始めたのも、その延長でした。
最初は、技術や知識が盗まれてしまうかもしれないという不安もありました。
「私が教えなくても、もっと上手な人がいるかもしれない」とためらう気持ちもありました。
でもそれ以上に、革花という世界を、もっとたくさんの人に知ってもらいたかったんです。
革花を、人生の選択肢のひとつにしてもらえるようになったら——
私が情熱を注いできたこの時間は、きっと無駄にはならない。
そんな思いで、私は革花の作り方を動画にして届けてきました。
これからの発信について|技術だけでは伝えきれないこと
YouTubeでは、初心者さん向けの動画を公開したあと、中級編へと進み、革花に関する補足的な内容も動画にしてきました。
でも、ブログでは少し違っていて。
販売していた頃に感じていた不安や、気になっていたこと、作家としてのリアルな経験や悩み、そしてそれにどう向き合ってきたのか——
9年間で培ってきたことを、包み隠さず、言葉にしています。
ブログを続ける中で、私はあることに気づきました。
販売方法やマーケティングに関する情報は山ほどあるのに、
「販売を続けていく中でどんな気持ちになるか」
「悩んだとき、どう考えるのか」といった、
リアルな“心の声”は、ほとんど見つけることができなかったんです。
私自身、そういう部分にずっと悩んできました。
ハンドメイドを続けていると、これまでに感じたことのないような気持ちが、たくさん生まれてきます。
「お客さまに喜んでもらえてうれしい」
「もっといいものを作っていきたい」
そんな前向きな気持ちもあれば、
「これ以上のものが作れないかもしれない」
「もう辞めたほうがいいんじゃないか」
と、焦りや不安に揺れることもある。
最初は夢中で楽しかったはずなのに、
ある日ふと、「私は何のために作ってるんだろう?」と立ち止まってしまう。
そんな瞬間、きっと多くの作家さんが経験していると思います。
でも、そういう気持ちを誰にも言えず、心にしまい込んでしまう人が多いのではないでしょうか。
私は思いました。
ハンドメイドを長く続けていくためには、「作り方」だけじゃ足りない、と。
技術と同じくらい大切なのは、感情と向き合う「考え方」だと気づいたんです。
嬉しい気持ちも、不安な気持ちも、全部ひっくるめて、どう捉えて、どう乗り越えていくか。
それを伝えることも、これからの私の役割なんじゃないかと思いました。
正直なところ、お節介なのかもしれません。
でも私は、悩んでいる人を放っておけなくて……。
SNSを見ていると、過去の私と同じように落ち込んでいたり、つまずいていたりする人がたくさんいて。
そのたびに、「どうにかできないかな」「何か届けたい」と思ってしまうんです。
だから今、こうして新たなかたちで、これからの発信についてお話しています。
これからは、革花の技術的な発信は少なくなっていくと思います。
革花の作り方は、過去の動画でしっかりとお伝えしていますし、あとは手を動かして、試していけば、必ず上達していきます。
それよりも私は、これから先、
「どうやって続けていくか」
「心が揺れたとき、どう向き合えばいいか」
そんなことを中心に伝えていこうと思っています。
哲学というほど大げさなものではないけれど、自分の歩んできた道や、そこで得た気づきを、ブログやラジオなどで少しずつ届けていきます。
もし今、何かを続けたいけど悩んでいたり、
心が折れそうになっていたりする方がいたら——
私のこれまでの経験が、少しでも支えになれたら、これ以上うれしいことはありません。
ここまで、たくさんのことをお話してきました。
実はこの内容を伝えるかどうか、1週間ほど悩んでいたんです。
というのも、私のブログやYouTubeチャンネルを見てくださっている方の多くは、きっと「革花の作り方を知りたい」という気持ちで訪れてくださっていると思うんです。
でも、これからは技術的な発信が少なくなってしまう。
そうなると、もう求めてもらえないんじゃないか、私が役に立てなくなってしまうんじゃないか……
そんな不安が、どうしても拭えなかったんですね。
けれど、自分の心に何度も問いかけてみました。
「私は、本当は何がしたいんだろう?」と。
そして気づいたんです。
もう、作品を販売することではない。
ただ作り方を伝えることだけでもない。
それよりも——
悩んでいる人や、つまずいている人、「もうやめたほうがいいかも」と感じている人の、“心の支えになれる存在”になりたい。
そう強く思うようになりました。
私がこれまで感じてきたこと。
ハンドメイドを続けていく中で、技術やマーケティングの情報は溢れているのに、「心が揺れたとき、どうすればいいか」の答えは、どこにも見つからなかった。
だから私は、そこに少しでも光を当てるような言葉を届けたい。
「どうしたらいいの?」と悩んだときに、そっと背中を押せるような存在になれたらと思っています。
もしかしたら、この先の発信は、今まで私の発信を見てくださっていた方が求めているものとは違ってしまうかもしれません。
「もういいや」と思ってしまう方もいるかもしれません。
それでも——私は、生きている限り、誰かの役に立ちたい。
そう思っています。
だからこれからは、やりたいこと、伝えたいことを、迷わず発信していく。
そう心に決めました。
長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
発信の方向性はこれまでとは少し変わるかもしれませんが、
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。