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知ってもらうとは、広めることじゃなく“残ること”|発信を続けて見えた本当の意味

One-Off KAOのブランドロゴ入りボックスとドライフラワー|革花ブランドの世界観を象徴する写真

最初は「知ってもらう=広めること」だと思っていた

ハンドメイド販売をしていると、最初の頃は知名度がなく、何をしても知ってもらうことができないのではと思うほど、落ち込むことがある。

私も、ハンドメイドをしている多くの人がやるように、販売を始めてからSNSでの発信を始めた。けれど、インターネットの世界では、対面販売の時のように知ってもらうことが難しいのだと思うようになった。

対面販売であれば、直接お客さまと話すことができるけれど、インターネット販売ではそうもいかない。画面の向こう側にいるお客さまに、どれだけ知ってもらえるかが大切なのだ。

インターネット販売を始めた頃、「毎日発信すること」が販売のために必要だと言われていたため、それが基本なのだと思い込み、ひたすら毎日発信をしていた。

今日はこんなことをした・新作ができた・販売はいつからだと、伝えられることは全部伝えようと、毎日のように1時間以上時間をかけてSNS投稿していた。

それでも、なかなか知ってもらうことはできなかった。

実践の中で見えてきた“届く”と“残る”の違い

SNSで発信を始めてから3〜4年が経ったころ。

どれだけ投稿を重ねても「いいね」はつかず、ましてや見てもらうこともままならない時期があった。

当初は、兄と一緒に革小物を中心に制作し、その様子をSNSに載せていた。
けれど次第に、革花アクセサリーの投稿が多くなっていった。

ちょうどその頃、コロナ禍で自宅待機の人が増え、SNSを利用する人も多くなっていた。
それなのに、私のフォロワーはむしろ減っていった。

今思えば、革小物を見ていた方々にとって、急に投稿内容が変わったことがきっかけだったのだと思う。
投稿を見る人の層も、男性から女性へと変わり、革花に興味がない人は自然と離れていった。

今ならその理由も、こうして冷静に考えられるし受け止められるのだが、当時の私にはどうしてもそれが辛かった。

毎日SNS投稿して、文章もしっかり書いて、想いを届けているのに、どうして見てもらえないんだろう?と。

投稿をすればフォロワーが毎回減る。増えたと思っても、また減る。その繰り返しで、SNSを開くことが怖くなっていた。


そんな中、地域の起業支援センターである「よろず支援拠点」で、どうしたらいいのか分からないと伝えたとき、「あなたのブランドが、革花アクセサリーを制作・販売していることを知ってもらいましょう」という助言をもらった。

すでにSNSは4年弱投稿を続けていたのに、フォロワーは投稿を始めてからあまり増えることはなかった。現状を見てもらううちに、足りないことがなんだったのか、少しずつ見えてきた。

当時の私の販売ページやSNSのアイコンは、統一こそしていたけれど、革花とは無縁のものだった。なんとなく撮影した画像をアイコンにしていたし、何をしている人なのかも分からなかっただろうと思う。

「これだと、どんな人が何をしていて、何を伝えたいのか分からない」ということも指摘されて、初めて【ブランドとは?】という問いを自分に投げかけた。

私は、革花を作っているけれど、誰がどこを見ても、革花を作っている人だと分かる目印みたいなものはどこにもなかった。あるのは、ショップ名であるOne-Off KAOという名前だけ。

それでは、到底知ってもらうこともできないし、覚えてもらうこともできない。

その流れから、デザイナーさんにロゴを作ってもらったのだった。

ロゴは、人目に付く場所すべてに使い、一目見ただけでブランドと屋号が一致するようにした。

ショップアイコンはもちろん、SNSのアイコンもすべて変えた。

ブランドに関わるものすべてにロゴを入れ、投稿のたびにアイコンを見てもらう。そして、革花とセットで覚えてもらう。

もし、ブランド名が読めなかったとしても、ロゴマークで覚えてもらう。

そうした地道な努力で、少しずつフォロワーやショップに来てくれるお客さまが増えていった。

ロゴを作るまでの4年弱、自分の中の世界観がまったく完成していなかった。

けれど、ロゴが完成したことで、ブランドの顔ができ、覚えてもらいやすくなったことはいうまでもない。

知ってもらうとは、信頼と記憶を育てること

ブランドを知ってもらいたいとき一番大切なのは、「どこを見ても、その世界観がすべて統一されているか」だと私は思う。

ブランドとは、ロゴだけでなく、どんな人が、何をしているのか、そしてどんな考えをもって活動しているのかまで、全部をひっくるめて世界観として現れるのだということを、これまでの活動を通して実感した。

たとえ一気に人気が出たとしても、それが一過性のものであれば意味がない。

誰かの心に深く刻まれるほど記憶に残る、という意味で「知ってもらう」ことが、コアなファンを作るのではないか。

そう考えると、数ではなく、狭くとも深く知ってもらう方が、ずっといいと思う。

広めるより、“残るもの”をつくりたい

私の革花の世界は、とてもニッチな世界だ。

検索ではなかなかたどり着いてもらうのは難しい。
そして、一気に爆発的に知ってもらうこともできないのは分かっている。

私ができることは、ただ「続けること」だけなのだ。

誰かの目に触れたとき、少しでも心に残る発信をする。
どんな活動をしていて、どんな考えをもっているのかを、一生懸命語り続けるしかない。

もちろん、広告を出せば、反応はあるだろう。けれど、私が求めているお客さまは、そこにはいないと思っている。

革花に興味を持ってくれて、作ってみたいと思ってもらえる。
そして、革花の世界観が大好きだと言ってくれる人に、来てほしいと願っているからだ。

「知ってもらう」ということは、続けること以外に方法はないのだ。

種をまき、水をやり、どんな日も丁寧に見守りながら育てる。
そんなふうに大切に育てたものは、いつか必ず大輪の花を咲かせる。


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▶ この記事の背景となった出来事は、下記の記事で綴っています。

ブランドが形になった日|One-Off Kaoロゴ完成と周知のはじまり

この記事は、「ものづくりで生きるということ」というカテゴリの中の一編です。
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