革花のグラデーション染め、最初に革全体を染める理由とは?
革花を作る工程で、グラデーション染めをするとき、まず最初に革全体を薄く染めるという工程があります。
「これから濃淡をつけていくのに、なぜこのひと手間が必要なの?」と疑問に思ったことはありませんか?
少し面倒に感じるかもしれませんが、実はこのステップこそ、美しく仕上げるための大切な工程なのです。
今回は、グラデーション染めでなぜ革全体を最初に染める必要があるのかにスポットを当てて、実例とともにお伝えします。
- 革花のグラデーション染め、最初に革全体を染める理由とは?
- 革染めの基本工程をおさらいしよう
- 理由①|革の裏側に色がないと、仕上がりがチグハグに
- 理由その②|コバ面が染まらず、雑に見えてしまう
- 革花作家kaoがたどり着いた方法
- 全体染めで気をつけたいポイント|花弁の隙間に注意
- まとめ|ひと手間を惜しまないことで、作品の完成度が変わる
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革染めの基本工程をおさらいしよう
まずは、革花でよく使うグラデーション染めの基本工程を確認しておきましょう。
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革全体を水で濡らす
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革全体を薄めた染料で染める ← ⭐今回ここを深掘りします
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少し濃い染料で、中心から花弁の端に向かって淡く染める
この②の工程を飛ばして染めることもできますが、完成度に大きく差が出てしまうのです。それは、どうしてなのでしょうか。
理由①|革の裏側に色がないと、仕上がりがチグハグに
美しく染まった革花をひっくり返してみたとき、「あれ?表と裏で色が全然違う…」と感じたことはありませんか?
もちろん、「あえて革の裏側をそのまま活かす」という表現もあります。それが意図されたデザインであれば、何の問題もありません。
けれど、表だけが美しく染まっていて、裏側が革のままだと、せっかくの革花がどこか“未完成”に見えてしまうことも。
実際の花を観察してみると、表と裏で微妙に色が違ったり、光の透け方によって印象が変わったりと、表情がとても豊かです。
そんな自然の花の魅力を表現するには、裏側まで染められていることが、完成度に直結します。
理由その②|コバ面が染まらず、雑に見えてしまう
革は紙と違って、必ず「厚み」があります。
その断面=コバ面の処理によって、仕上がりが大きく変わります。
レザークラフトの世界では、このコバ面を丁寧に磨くことで、艶やかで美しい断面に仕上げます。それはレザークラフトの醍醐味のひとつでもあります。
ただ、革花の場合は革が薄く、サイズも小さいため、レザークラフトのような磨き仕上げは難しいという課題がありました。
革花作家kaoがたどり着いた方法
そこで、私がたどり着いたのが――
革全体をあらかじめ染めてしまうという方法です。
これは一般的なレザークラフトではあまり見かけない工程で、革花という小さな作品ならではの工夫。
特に、コバ面を筆で染めようとしてもうまくいかず、ムラになったり、最初に筆を置いた部分だけが濃くなってしまったりと、均一に仕上げるのが難しかったのです。
だからこそ、最初に革全体を染めておくことで、表・裏・コバまで染料が自然に行き渡り、美しい仕上がりになることに気づきました。
👇実際に全体染めを行っていなかった作品がこちらの記事に登場します。
仕上がりの印象の違いを、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
全体染めで気をつけたいポイント|花弁の隙間に注意
とはいえ、全体を染めるときにも注意が必要です。
特に染まりにくいのが、花弁と花弁のあいだの隙間。
革を染料に浸すだけでは、入り組んだ部分までしっかり染まらないことがあります。
そこで大事なのが、花弁を一枚ずつめくって、隙間に染料を行き渡らせること。
このひと手間で、ムラのない仕上がりに近づきます。
実際、私自身もこの部分を染め忘れてやり直した経験が何度もあります。
まとめ|ひと手間を惜しまないことで、作品の完成度が変わる
革花を作るとき、染めの工程はとても楽しく、つい流れるように進めたくなってしまいます。
けれど、このほんの少しの工程を丁寧にこなすことで、作品の完成度は驚くほど変わります。
「なぜこの工程が必要なのか」を知っているだけで、新しい花を作るときにも活かせる“視点”が増えていくでしょう。
革という素材に向き合う時間は、手間をかけた分だけ美しさとして返ってくる時間でもあります。
あなたの手から咲く革花が、より美しく仕上がりますように──。
関連記事
今回の内容が、あなたの革花づくりのヒントになれば嬉しいです。
さらに理解を深めたい方は、以下の関連記事もぜひご覧ください。
- 中級編#05|ひまわりの陰影をつける染色法(YouTube動画)
→ この動画の中で、コバ面の染めムラについてもお話ししています。
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