世界一くわしい革花の専門書 | 革花作家kao

革花(かわはな・レザーフラワー)の作り方、染色、成形、型紙づくりなど、革で花を作るための技術と学びをまとめた専門ブログです。

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ありのままの私で存在するということ ― 私が本当に欲しかったもの ―

 

2025年3月。

私は、革花を作ることから、伝える方へと舵を切った。

あの時の私は、これまでにない苦しさの中にいた。

自分で選んだ道を、また一歩踏み出すための選択だったのに、不安で、怖くて仕方なかった。その選択が正しかったのかどうかもわからなかった。

でも、今振り返ると、その不安や怖さは“通過点”だったのだと気づいた――


2017年

レザークラフトに出会い、革で花を作りたいと強く思ってから、私はただひたすらに革花を作り続けていた。何の特技もない、得意なことや好きなことを聞かれても「何もない」と答えるほど、自分自身に興味がなかった私を、ここまで成長させてくれたのは、革花という存在だった。

革花を長く続けていく中で、革花を好きだと言ってもらえる作品を作ることが、私の根幹にある願いだった。

なのに、いつしか私は、ハンドメイドで成功する=多くの売上があることだと考えるようになってしまっていた。日々の制作の中で行われることのすべてが、「売れるため」の戦略に変わり、「どうすれば売れるのか」へと目標が変わっていた。

必死に追いかけていたのは、「革花を好きだと言ってもらえるような作品」ではなく「売上」になってしまったのだ。

あろうことか、私は、そのことに大きな収益が上がるまで気づかずに来てしまっていた。きっと、お客さまは、それを見抜いていたはずだ。


2025年1月

これまで以上に思わぬ形で多くの注文をいただいた。

「こんなに沢山の革花を、どうやって届けよう…どうしよう…」

それが最初の一言だった。これまでにない、弱気な思いが出てきた。初めてのことだった。

これまでは、注文が来るたびに、「嬉しい、ありがとう。」とひとつひとつの作品に伝えて発送していたのに、なぜか嬉しいと思えず、「できないかもしれない。どうしよう」とそればかりが心の中を巡っていた。

心が追い付かない、嬉しいと思えない。それに対して、「どうしよう」という言葉になって出てきたのだ。

そう思うと、革花を作ることさえままならなくなってしまい、いつもの何倍も、何倍も時間がかかり、それがさらに「どうしよう」という思いを膨らませた。


――私は、一体何を追いかけていたのか。

目先の売上ばかりに神経を使い、本当に大切にしてきた「革花を作る楽しさ」をもう何年も前に置き去りにしていたことに、この時、ようやく気付いた。

どれだけ作っても心が満たされないし、何を作っても「売れないかもしれない」と真っ先に考えていた。売上を上げるためには、人の何倍も頑張らないと結果は出ない。

私は人よりも劣っているんだから、やるしかない。

 

頑張れ!

頑張れ!!!

頑張れ!!!!!!!

やるしかない!!!!!!

私にはこれしかないんだから!!!!!!!!!!!!

 

…「もう、販売をやめたい」と思った。

大好きだった革花を作ることが、苦痛でしかなくなってしまった。

あれだけ、私がゼロから大切に大切に創り上げてきたものなのに、いつしか革花を「売る為の道具」にしてしまっていた。

たくさん売れたことの嬉しさより何より、必死になって創り上げてきた革花を、道具としてしまったことと同時に、過去の努力は一体何のためだったのかという自己嫌悪にさいなまれた。

私の根幹にあった革花を好きだと言ってもらえる作品を作るという思いが失われてしまったことへのショックも大きかった。

楽しくて仕方なくて、やってみたいと心からワクワクしながら作り、完成した革花を手にしたときの喜びは、光を失い「ただのモノ」としてしか存在しなくなったとき、私は、「もう革花を“売る”ことをやめよう」と思った。


思い出せば、私は、販売を始めてから2年目ころから、そういう思いがあることに気づいていた。

何をやればいいんだろう。

何を作ればいいんだろう。

何をしたら売れるんだろう。

そう考えるだけで、革花を作るのが楽しいという思いが薄れ、仕事として機能しているものにしか思えなくなっていた。

私の中にあったワクワクした気持ちが失われると、途端に制作の手が止まり、1か月間何もできないという状況にたびたび陥った。

その時は、ちょっと頑張り過ぎたからかもしれないと軽く考えていたけれど、実際は心がボロボロだったのだろうと思う。何も考えられなかったし、何もやる気が出なくて、家から出ることができなくなっていた。

「お茶でもして気分転換してきたら?」と夫から勧められても、「誰にも会いたくない」と周りから距離を置こうしていた。私の心は、とても疲れていた。


2025年3月

転機が訪れた。

これまで、誰にも見せず、誰にも教えなかった革花の作り方を、ブログで書くことにした。

遅かれ早かれ、私はいつか歳を取り、手も足も動かなくなる日が来るかもしれない。長年酷使してきた目も、30代から老眼が出始め、手元がしっかり見えなくなっていた。

これまで、誰かに見せたら技術を盗まれるのではないかという恐れから、作り方を外に出すことをしてこなかったのだが、ぎゅっと握りしめていたその手を開くことにした。

私が目が見えなくなっても、手足が動かなくなっても、「革花」という素晴らしい世界だけは絶対に残したいと思ったからだ。

私と革花との8年は、誰にも見ることができないし、誰にも盗まれることはない。そんなふうに思えるほど、人生の中で何よりも必死に向き合い続け、濃密な時間を通して、誰にもできない「経験」をすることができたのだ。

それが、私にとって、何よりも宝物だ―――

そう思えた途端、「もう、すべて手放そう」と心から思えた。


それから、私は、「世界一くわしい革花の専門書」を作ろうと決めた。

―「作る」から、「伝える」へ。

私が過ごしてきた、とてもとても長いようで短かった革花との人生を、全部このブログに残そうと思っている。

「革で花をつくってみたい!」と思った時、すぐそばに作り方があって、

「もっといろんな花を作ってみたい」と思った時、そっと手を差し伸べるようなヒントがある。

そして、「誰かのために、革花を届けたい」と思った時、どんな気持ちで向き合えばいいのか。

そこには、作り方や上達するための技術だけでなく、小手先のテクニックやノウハウだけでは絶対に得られない“心の在り方“についても、あますことなくすべて書くつもりでいる。

それが「何のためになるのか」なんて考えていない。ただ、求める人がいたら、どうぞ使ってくださいという思いでいる。

もし、誰かの役に立たなかったとしても、それでいい。私が一生のうちに経験した濃密な経験を「自分史」として残せるだけでもいいと思っている。

それくらい、私にとって、宝物の時間だったからこそ、誰にも汚すことはできないのだ。


2025年7月

昨日、ふと、過去を振り返ったとき、自分がまるで別人になったかのような感覚になった。生活している環境も、家族も、日々の生活も何ら変わっていないのに、何かが違う。

変化したのは、“心”なのか…と、気づいた。

私は、家族と一緒に楽しく毎日を過ごしながら、自分らしく生きたいと心から願っていた。自分がやりたいことをやって、それが誰かのためになったら、なおいいなぁ…

そう思いながら、目の前にある「今」この瞬間を大切に生きている。

誰かに教えてもらった“答え”のある毎日を生きるのではなく、今、私がどうしたいのかという思いに気づき、ただそれに従って生きる。

それが、本当の意味での「心のままに生きる」ということなのか。

何もしていないこの瞬間にこそ、ありのままの私として存在している価値があるのだ。

私が心から欲しかったものは、お金ではなく、「ありのままの私として存在すること」だった。


この記事を書きながら、過去を思い出して、とても心が痛くなって涙が出た。

必死になりすぎて、心を殺して生きていた過去の自分自身に、本当に申し訳なくて、ごめんねととにかく何度も謝った。あの時は、そうするしかなかったといえば言い訳にしかならないけれど、本当にごめんね、と。

私は、この世界一くわしい革花の専門書を通して、過去の自分を癒しているのかもしれない。だから、誰のためにならなくても、毎日書こうと思えるのだと思う。

けれど、私のように、自分自身の心を殺して生きている人がいたら、私の言葉で救いたい。心のままに生きられないことが、どれだけつらいか、私は知っているから。

だから、そんな人のためになれたら、過去の私も、今を生きる私も、心から嬉しい。

人生は苦しいことの繰り返しだと思いながら生きている人がいるなら、そんなことはないよと伝えたい。未来を作るのは、そうした苦しみの中で頑張っている自分自身だから。

その先にある未来がどうなるのかなんて、誰にも予想できないけれど、どれだけのことをやってきたのかは、あなた自身があなたの目で見ているでしょう。

だから、誰も見ていないことなんてない。

あなた自身が見ていれば、誰にも認められなくたっていい。

大切にしてほしいのは、あなたの心だけだから。

あなたも、もしどこかで
「がんばりすぎているな…」と感じていたら、
それは、本当のあなたに戻るサインかもしれません。

🌙 心が疲れたときに読む、あなたを知るための手紙

 


 

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