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目標中毒だった過去の私へ ――数字を追い続けた私が、やっと気づいたこと

 

販売を大幅に縮小してから、約2か月が経つ。

最近の私は、以前に比べて、心がずっと凪のように穏やかだ。何より、「これから何をしよう」という不安がない。

ふと気づいたことがある。
――今の私には“目標”がない。
あれもしなきゃ、これもしなきゃと、常に頭をフル回転させていた以前の私とは、大きく違う。


兄と一緒に革小物を制作・販売していた初期のころは、大きな作品を作っていなかったこともあって、「作ること」に集中できていた。だからこそ、明確な目標を立てていた記憶はない。

でも、その在り方は、少しずつ変わっていった。


革花を作り始めた当初、作り方も素材も、情報が何もなかった。だから、ただひたすら作ることに没頭していた。考える暇すらなかったというのが正しいかもしれない。

この頃の目標は、「革で花を作れるようになること」。

その目標があったから、毎日どんなに大変でも、革と向き合い続けた。どうすれば美しく咲くか、どうすれば魅力的に見えるか、どう染めれば理想の色になるか。考えることも、試すことも、すべてが楽しかった。

その分、驚くほど成長できた。自分の力に、自分自身が一番驚いていた。
楽しくて、充実していた。


2018年の秋、インターネットでの販売を始めた。

目標としていた「革花を完成させる」ことが達成できた今、それをアクセサリーとして形にし、販売できるかもしれないと思ったからだった。兄と離れ、ほぼ一人で制作・発信・販売すべてを担うようになった。

最初は売上も少なかったけれど、制作の手を止めずに続けていると、少しずつお客さまから反応が返ってくるようになった。

2019年、売れ始めたことで、アクセス数や売上が気になり出した。

「自分に足りないものは何か?」と考えたとき、私はこう思った。

――目標をきちんと立てていないから、迷うんだ。

そこから私は、売上を目標にするようになった。

デザインを見直し、作品画像の撮影方法を研究し、説明文を何度も書き直す。何が効果的か分からないから、とにかく手あたり次第にやってみた。

すると、不思議なほど結果が出た。頑張れば頑張るだけ、誰かが見てくれて、買ってくれる。
「やっぱり目標って大事なんだ」と、そのときは強く思った。


それから私は、事あるごとに目標を立てた。

・いつまでに売上○万円
・いつまでに作品○点
・いつまでにリピーター○人

細かく設定して、自分が道に迷わないようにした。目標に向かって走る自分に、安心していたのかもしれない。


けれど、その先に待っていたのは「作れない自分」との出会いだった。

頑張って、成果も出ていたのに、心が疲れ果てていた。革を見るのもつらく、何もできない。

「ちょっと休もう」と思って手を止めると、今度はまったくデスクに向かえなくなった。革を見るのもつらい。作りたいのに、心がそれを拒む。

それが年に1度、2度と起こるようになり、1か月以上まったく手を動かせないこともあった。

やらなきゃいけない。分かっているのに、できない。
目標のために動きたいのに、体も心も動かない。

そのたびに、私はひどく自分を責めていた。
「もう限界なのかもしれない」と思うほどに。


やればできるはずなのに、どうしてできないんだろう。

売れなくなったら、生活はどうなるんだろう。夫に迷惑をかけてしまう。

「ハンドメイドをやめて働いたら?」と、次にまた言われたら、私はどうすればいい?

ここまで作ってきた革花が、水の泡になるんじゃないか。

……どうしたらいいの。


こうして私は、数年間、「目標を立てては自分を追い詰める」を繰り返していた。

今になって思えば、それは「目標という名の鞭」を自分に打ち続けていたようなものだった。

でも当時の私は、それにまったく気づけなかった。

頑張る、頑張る、と言い聞かせ、達成したら「次はこれ」と次の目標を立てる。

息苦しかった。胸が苦しかった。深呼吸すらうまくできなかった。

そう、私は完全に“目標中毒”だった。


「売る」ことから「伝える」ことへシフトした今、あの頃を振り返って思うのは、

――私は、自分にかわいそうなことをしていた、ということ。

一番の問題は、目標の「立て方」にあったのだと思う。


目標は、本来、小さな成功体験を重ねるためのもの。

私にとっては、「革で花を作れるようになりたい」がそうだった。
その目標があったから、楽しくて、伸びて、夢中になれた。

でも、途中から「売上○万円」「リピーター○人」と、数字を追うようになってから、心がズレはじめた。

革花は、私のアイデンティティそのものだったのに、
「お金に換えるための手段」として扱い始めたことで、心に深いダメージを受けてしまった。


「目標がないと頑張れない」は、
「何かしていないと不安」の裏返しだったのかもしれない。

革花を始めたときから、「仕事にする」と決めていた。
だから目標に向かって走れた。

でも2021年、開業してからは「失敗できない」「つぶれたらどうしよう」と常に恐れていた。

小規模事業者の6割が3年以内に廃業するというデータも知っていたから、余計に。

「家族に迷惑をかけたくない」
「自分が選んだ道だから、自己責任でちゃんとしなきゃ」

ずっと、そう思っていた。

社会にうまくなじめなかった自分が、やっと見つけた革花。
それを守りたかったし、できれば生活も支えたかった。

その2つの想いが、いつも私の中にあった。


今、2025年。
私は革花を始めて9年目。開業から5年が経った。

販売を続ける中で気づいたのは、
「心の在り方」が、何よりも大切だということ。

大事なのは、目標の有無じゃなくて、
「自分と向き合って、どう生きたいか」が明確になっているかどうか。

今の私は、目標を持っていない。
でも、毎日とてもリラックスしている。

心の声がちゃんと聞こえるようになった今、
「やりたい」と感じたことを、すぐに実現できる状態にいる。


目標は、持ってもいい。
でも使い方を間違えると、自分を傷つけてしまうことがある。

もし目標を持つなら、「成果」ではなく、
「できるようになりたいこと」や「こうありたい」という想いから立ててほしい。

それは、きっとあなたのアイデンティティをもっと輝かせてくれる。
そして、それが現実を大きく変えるきっかけになるはずだから。

あなたも、もしどこかで
「がんばりすぎているな…」と感じていたら、
それは、本当のあなたに戻るサインかもしれません。

🌙 心が疲れたときに読む、あなたを知るための手紙

 


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